OpenFoamを用いた流体解析

1.OpenFoamによる熱体解析

「テーマ」

・F-1性能において重要となるダウンフォースをグランドエフェクトの観点から解析する。

「方針」

 OpenFoam※1を用いて流体解析を実施します。

 尚OpenFoamを正確に使用するには高度な流体力学の知識が必要となります。しかし当事業所ではOpenFaomを流体力学の初歩知識のみで使用しているため、参考程度とお考え下さい。

※1 OpenFoam:オープンソースの流体解析ソフトウエア。


1.1 モデル設定

 下記のような翼を仮定し、地面との距離でどの程度揚力(ダウンフォースのため下向きが正)が変化するかを検討してみます。

・翼形状:対称ジューコスフキー翼(γ角=0、a=0.9、写像前半径R=1m)

 (適当なものが見つけられなかったため、2次元翼理論に用いられるジューコスフキー翼を作成しました(参考文献[1]) 。)

・翼弦長:1.82m、翼厚比13%

・周囲風速:60 m/s(時速216km)


1.2 OpenFoam実行

 計算条件を以下に示します。

 CFD設定

・メッシュ:12(長さ) x 3.4(高さ) x0.08(幅)mを120x60x1の合計7200マスに分割(2次元)。

 翼周りは4倍の細密化。更に前後縁端では更に4倍の細密化(およそ6mm)。

・積分幅:Δt=12.7μsec前後(OpenFoam自動分割による)

・クーラン数 max0.3(実際はv*Δt/Δx=60×12.7μ/6mm=0.127。局所的には速度が上がるので設定通り)

・周囲速度60m/s、上下面はslip条件、地面表面は周囲速度と同じ60m/s。

・圧力:出口をゲージ圧0で固定(今回は入口固定よりもスムーズな計算結果となった)。

・空気動粘性:2.0e-5 m2/s

・揚力係数Cl及び抵抗係数Cdは追加機能関数forceCoeffsを使用。

・解析ソルバーはpisoFoam(非圧縮・非定常乱流解析ソルバー)

・乱流モデルはRAS(レイノルズ平均に基づく乱流モデル)でkEpsilonモデル(標準k-εモデル)

・epsilon、k及びnutファイルの設定は参考文献[2]4.5.5章に従う。

 上記以外のパラメータは以下のOpenFoamチュートリアルの物をそのまま使用。

    tutorials\incompressible\pimpleFoam\RAS\pitzDaily

 尚本モデルは大まかな流れを見るレベルで、詳細な渦の様子を見ることは厳しいらしいです。

この辺りは専門的性が高く、当事業所では単に使うレベルとなってしまいます。

上述条件で計算した結果を以下に示します。

尚この計算にIntel Core i7-12650HのPCで解析空間0.8秒に対し約80分の計算時間を要しています。

 周囲速度60m/sは翼を迂回する際に76m/s(線)まで増速しています。一方圧力は-1112Pa(背景)まで減圧されています。この減圧分は速度増速分1088Pa(=0.5*(762-602)とほぼ一致します。尚非圧縮の場合、OpenFoamでは密度1として計算されているそうです。


1.3 グランドエフェクト

 テーマであるグランドエフェクトについて計算していきます。

対称ジューコスフキー翼を-4度の迎角を持たせ、上空と地面すれすれ(翼-地上間最短距離23cm)の2ケースの計算結果を以下に示します。

 尚グランドエフェクトの形式としては1977年F-1において最初にウイングカーとして登場したロ-タス78及び1979年のウイリアムズFW07と同じサイドポンツーン内に翼断面を後縁上げの配置としている形式を模してみました。

上側が上空での様子で下側が地上付近の様子を示しています。

上空では翼を回り込む大気速度は最大90m/sであるのに対し、地上付近では最大121m/sまで増加しています。

 もともとの周囲速度が60m/sに対し、グランドエフェクトにより約2倍の121m/sに達しています。

 この周速のため、揚力係数CLは上空約0.55A改に対し、地上付近では2倍強の約1.35A改となっていました。

この効果が1980年初期にF-1界において話題となったグランドエフェクトと考えられます(筆者は自動車設計を経験したことがありませんので推定となります)。

 一方抵抗係数CDは上空約0.0266A改に対し、地上付近では0.0474A改と約1.8倍の悪化を示しています(L/Dとしては良くなっていますが)。

 この状況を概念で説明するならば、上空では翼を回避する気流は翼厚の2倍辺りまで回り込んでいますが、地面が近くにあるとその回り込みが出来ず、狭い隙間を通らざるを得ないように見えます。その際に速度が増加していると考えられます。

 尚上記計算結果はメッシュの出来具合いにかなり依存します。そのあたりの検討結果をDetail1に示します。

 また上述CL、CDは実験値との比較を実施出来ていませんので、あくまで参考値としてください。


1.4 航空機の場合

 航空機も地上すれすれで揚力が増すことが知られています。この現象をグランドエフェクトと呼びますが、前項の結果からは地上付近では翼下の速度が増加するようです。そうすると航空機の翼では下面が負圧となってしまい、揚力が減ってしまいます。

 そこで前項と同じ計算を迎角+4度で実施して見ました。結果を以下に示します。

 上空では翼を回り込む大気速度は最大92m/sであるのに対し、地上付近では最大90m/sで、ほぼ同じままです。このため揚力係数も上空約0.539A改に対し、地上付近でも約0.557A改とほぼ同じとなっていました。

 結果、航空機のグランドエフェクトはF-1のような説明は出来ないことが推察されます。

専門書によると3次元翼の翼幅方向の流れと地面との相互干渉によるものだそうで、2次元の現象ではないそうです。

 ここで渦の様子を見るために上記地上付近の計算結果のnut(乱流粘性係数)を以下に示します。

速度計算の結果にはそれほど渦の様子は確認出来ませんでしたが、nutからは渦と思われる形状が見て取れます。

 この渦に関してもう少し詳しく確かめるためにLES(Large Eddy Simulation)を用いた計算を円柱周りの流体解析で検討してみます。

尚この検討結果は薄板固有振動数解析の条件となっています。


参考文献

[1]ブルーバックスシリーズ 高校数学でわかる流体力学 竹内淳著 講談社出版

[2]OpenFOAMによる熱移動と流れの数値解析第2版 一般社団法人オープンCAE学会編 森北出版


改訂記録

A改訂 2025.5.17:CL及びCD値修正(必要のない密度補正1/1.225を実施していた)