「目的」
openfoamを用いて循環Γと渦度vorticityをビジュアル化する。
「方針」
3次元翼を考える際に教科書に必ず出てくる循環Γと関連する渦度vorticity。式はよく見かけるのですが実際にどんな数値となるのかを簡単な円柱流れを題材にしてビジュアル化してみます。
〇ストークスの定理(関連文書[1]3章)
右辺が渦度の積分になっています。


〇循環Γの定義式と使われ方(関連文書[2]4.4項)


1.解析モデル&OpenFoam設定
・メッシュ
直径2[m]×高さ1[m]の円柱を半径方向10、円周方向80、高さ10の合計8000マスに分割。
・積分幅:adjustTimeStep=yesとしてクーラン数による自動設定。
・クーラン数 Co=0.5
・速度分布 半径0.5[m]までを0~0.8[m/s]の円周方向の旋回流
・下降速度:下降気流0.2[m/s]
・動粘度:空気 1e-5[m2/s]
・解析ソルバー PimpleFoam(非圧縮・非定常乱流解析ソルバー)
・乱流モデルはRASでturbulance off(つまりlaminar)
・k及びepsilonはturbulance offのため計算されず
・fvSchemes及びfvSolutionは適当。

U_xy = √(Ux2+Uy2):メッシュが粗いため0~0.8[m/s]を5段階で付与。
2.計算結果
2.1 OpenFoam計算結果
まずは計算結果(解析空間で6秒)を示します。綺麗に旋回(周速0.8[m/s])しながら下降(下降0.2[m/s])していく様子が見て取れます。

断面の様子を示します。
底面の境界条件のために中央では上昇流(2枚目)が発生しています。このため以後の解析はちょうど半分の高さ0.5[m]を選定しました(ここでは以後、上昇流を無視します)。


断面(h=0.5[m])のU_xyの様子を示します。
回転部の半径が0.5[m]から0.7[m]位に拡大し、一方中心部の回転はほぼなくなっている様子が伺えます。
この様子は現実の世界でも容易に想像される動きとなっています。

この結果を受けてストークスの定理の確認を行っています。
まず渦度(∇×U)のz成分を示します。
(表示前に後処理としてOpenFoamコンソールで「postProcess -func vorticity」を実行する必要があります)
この渦度の分布を面積積分することで外周の速度が計算出来るというのがストークスの定理となります。

その前にもう一つ出力すべきものがあります。
それが以下に示すQ基準となります(関連文書[3])。
例えば∇×Uの成分である∂Uy/∂xは渦度がない場所でもせん断力や伸縮に対応する値を持ちます。すると前述∇×Uの値のうち、どれだけの量が渦度なのかを知っておく必要があります。
その一つの基準としてQ基準があるそうです。Q>0ならばその∇×Uは渦度が優っているという指標となります(説明の通り完璧な指標という感じでもないですが)。
今回のQ基準を以下に示します。この図よりQ<0の領域の∇×Uは渦度としては使用できないことになります。

(Q基準は後処理としてOpenFoamコンソールで「postProcess -func Q」を実行する必要があります)
2.2 ストークスの定理
Q値を踏まえて渦度z成分を面積分していき、その円周の速度を推察してみます。
(1)半径0.7[m]でのストークスの定理
前項の計算結果vorricityのz成分をQ>0且つ半径0.7[m]以下の領域をエクセルを用いて面積積分してみました。
∫(∇×U)zdA = 0.751
ストークスの定理より
2πr・v=0.751
∴v=0.751/(2π*0.7)=0.171[m/s]
OpenFoam計算結果でも半径0.7[m]での速度は0.2[m/s]とおおよそ一致しています。

(2)半径0.4[m]でのストークスの定理
同様の計算を半径0.4[m]以下で実施してみます。
∫(∇×U)zdA = 0.466
∴v=0.466/(2π*0.4)=0.185[m/s]
OpenFoam計算結果でも半径0.4[m]での速度は0.19[m/s]と十分一致しています。

3.まとめ
paraviewを用いることでストークスの定理をビジュアル化出来ました。
実はここまでの議論で循環Γを必要としていません。あくまでストークスの定理を確認しただけです。循環Γは複素速度ポテンシャルから揚力を求める時に重要な役割を演じますが、今回のような揚力の関係しない解析結果から渦度と周速の関係を確認する際にはその姿を現しません。
さらに渦糸という概念は循環Γが一本の極限に細い渦度で表現している点がストークスの定理とは違います。ちなみにストークスの定理でむやみに評価する半径を大きくしても実際にそこまで回転流が届いていなければ現実とは一致しません。前項でいうと評価半径を1[m]にしてもopenfoamの計算結果とは一致しません。
参考文献
[1]なっとくする物理数学 都築卓司著 講談社
[2]よくわかる航空力学の基礎[第2版] 飯野明監修 秀和システム
[3]Chakraborty, P., Balachandar, S., Adrian, R. J. (2005). On the relationships between local vortex identification schemes.
