1.1 モデル設定
下記のような円柱周りの気流の流れを検討してみます。
・直径1m、高さ2mの円柱に70m/s(250km/h)の気流が当たる。
若干無理くりな設定ですが、あくまで例題としてご参照下さい。本計算結果がScilab及びFreeCADの薄板解析の条件となっています。

1.2 OpenFoam実行
計算条件を以下に示します。
CFD設定
・メッシュ:10(長さ) x 4(高さ) x5(幅)mを60x24x30の合計43200マスに分割。
円柱周りは2倍の細密化。
・積分幅:Δt=0.1msec
・クーラン数 max0.3(実際はv*Δt/Δx=70×0.1m/0.083m=0.08)
・周囲速度70m/s、上下面及び側面をslip条件。
・空気動粘性:2.0e-5 m2/s
・解析ソルバーはpisoFoam(非圧縮・非定常乱流解析ソルバー)
・乱流モデルはLES(Large Eddy Simulation)でダイナミック1方程式モデル(dynamicKEqn)。
・k及びnutファイルの設定は参考文献[1]4.5.5章に従う。
上記以外のパラメータは以下のOpenFoamチュートリアルの物をそのまま使用。
tutorials\incompressible\pisoFoam\LES\pitzDaily
尚本モデルは通常RAS計算を行い、その後LES計算に移行するものだそうですが、今回は強引に最初からLES計算を行ってみました。この辺りは専門的性が高く、当事業所では単に使うレベルとなってしまいます。


上述条件で計算した結果を以下に示します(解析空間で2.1秒後)。
周囲速度70m/sは円柱を迂回する際に107m/s(線)まで増速しています。圧力は円柱表側で+2500Pa(半透明直方体)まで増圧されます。これは動圧分0.5*702=2450Paとほぼ一致します。一方円柱側面では-4500Paまで減圧されていますが、動圧分0.5*(1072-702)=3270Paとかなりずれています。このあたりは以下の2点が主な原因と思われます。
・有限空間での計算のため上流の圧力が0Paから230Paに上昇。
・粗いメッシュのため境界層を良く模擬出来ていない。
実際、円柱側面から10cm離れた点では速度104m/sで-3020Paであり、動圧分0.5*702+230-0.5*1042=-2730Paとおよそ一致します。
尚非圧縮の場合、OpenFoamでは密度は1として計算されているそうです。


1.3 周期的振動(カルマン渦)
圧力の周期を確認するため、下図緑の点における圧力を計測しました。
点の位置は半径51cmで円柱より1cm大きい位置で、角度15°ずつ変化させています。

計測結果をグラフにまとめてみました。
(注意:OpenFoamの非圧縮計算では大気密度が1kg/m3となっており正しくは計算結果である圧力には補正(大気密度分の1.225kg/m3を掛ける)が必要ですが、ここでは補正していません。)

角度0°の正面では約2500Paの正圧が立っており、70m/sの動圧分と一致してます。
また角度90°の側面では約-5000Paの負圧となっており圧力係数Cp=-5000/(0.5*702)=-2.0と幾つかの書籍に掲載されている乱流実験値Cp=-2.0と良く一致しています。
一方角度180°では約-750Paで圧力係数Cp=-750/(.5*702)=-0.29は実験値Cp=-0.8と結構ずれてしまいました。これは渦の再現度が低いためと推定されます。
注意すべきは円柱の背圧が意外に負圧が大きいという点です。負圧は人間の感覚以上に外板を固定するリベットに荷重がかかることとなります。
図中角度105°での圧力をscilabを用いたFFTアナライズを掛けてみた結果を以下に示します。
結果14Hz辺りに圧力振動のピークが見られ、カルマン渦14Hz(下式)と一致します。
f=0.2*V/D=0.2*70m/s/ 1m = 14Hz
但し流れは乱流となっているため、綺麗にカルマン渦のみのピークが出るという訳ではなさそうです。
(上記カルマン渦の公式に使用している0.2という数字はストロ-ハル数と呼ばれており、レイノルズ数2x105までの速度(4m/s)に対応しているそうです。このため今回のような速度(70m/s)には対応できていなさそうです。もう少し詳しく検討した2D円柱周りの解析をこちらに示します。)

円柱周りの解析は以上となります。当事業所の実施している流体解析はこの程度の精度であり、試験値と良く比較することが重要であることをご承知おき下さい。
尚Scilabにおける薄板強度解析では本計算結果のうち、角度30°付近の平均圧力0Paに角度180°(背面)での0~150Paの圧力振動を加えた設定としました。つまり本円柱周り計算結果とは一致しない無理くりな設定となっていることをご了解下さい。
参考文献
[1]OpenFOAMによる熱移動と流れの数値解析第2版 一般社団法人オープンCAE学会編 森北出版
