OpenFoamにおける境界層の確認

「テーマ」

・OpenfoamのRAS(レイノルズ平均乱流モデル)計算における境界層の妥当性の確認

「方針」

 OpenFoamを用いて流体解析を実施し、工学的経験式との比較を行う。


1.OpenFoamによる流体解析

1.1 モデル設定

 下記のような2Dの解析空間を設定します。

・0.6mx4.5mの細長空間

・入口から50cmのところに1cmの段差(乱流の起点用)

・周囲風速:50 m/s(時速180km)


1.2 境界層厚さの理論式/経験式

 層流境界層厚さの理論式及び乱流境界層厚さの経験式は以下となります(参考文献[1]13.6章)。

  〇層流境界層の厚さ(理論式)

   δ=5.2*x/Rex0.5

  〇乱流境界層の厚さ(経験式)

   δ=0.37*x/Rex0.2

  但しRex=v*x/nu

    x:起点からの距離[m]

    v:速度50m/s    

    nu:動粘性係数2*10-5[m2/s)] 

上記式の計算結果をグラフにすると以下になります。

 層流境界層は起点から4mの所で7mm位しか成長していませんが、乱流境界層は59mmまで成長しています。

 Openfoamでは一つのソルバーで層流境界層と乱流境界層の両方を表現出来るものがないようです。更に本事業所で扱う事象では乱流境界層に遷移していくレイノルズ数(数百以上)が多いため、本検討では乱流境界層のみを検討対象とします。


1.3 OpenFoam設定。

 CFD計算条件を以下に示します。

・メッシュ:4.5(長さ) x 0.6(高さ) x0.04(幅)mを225x30x1の合計6750マスに分割(2次元)。

 下方1/3の領域を4倍に細密化(1メッシュサイズは5mmx5mm)。

・積分幅 :1e-5秒、1e-6秒  ※1

・クーラン数: 0.1 、 0.01  ※1

・周囲速度50m/s、上面slip条件、下面は0m/s。

・圧力:出口をゲージ圧0で固定。

・空気動粘性:2.0e-5 m2/s

・解析ソルバーはpisoFoam(非圧縮・非定常乱流解析ソルバー)

・乱流モデルはRAS(レイノルズ平均に基づく乱流モデル)でkEpsilonモデル(標準k-εモデル)

・epsilon、k及びomegaの初期値は参考文献[2]4.5.5章の計算値の約1/5を設定。

・nutの初期値は0とし、nuTildaは無視(使われていない。たぶんomegaも使われていない)。

 上記以外のパラメータは以下のOpenFoamチュートリアルの物をそのまま使用。

    tutorials\incompressible\pisoFoam\RAS\cavity

※1:2D円柱解析よりクーラン数は0.01とするか0.1とするか迷うところです。ここでは両方を実施して乱流境界層の成長の様子を比較します。


1.4 Openfoam計算結果

 上述条件で計算した結果を以下に示します。

〇クーラン数0.1(積分幅1e-5秒、解析空間0.2秒後)  /  y+(床面) Ave 236

 前方の段差直後に10mm跳ね上がっています(1マス5mm四方)。※2

 後方端では70mm程度のところが境界層と見て取れます。

 跳ね上がり分を差し引くと距離4mでの乱流境界層の成長幅は60mmとなります。

 一方上述理論式では距離4mの時点で59mmでしたのでRASを用いた本計算は良く一致していると考えます。

 ※2:10mmの段差で10mmの跳ね上がりというのは工学上、一つの目安になりそうです(但し50m/sの時)。

〇クーラン数0.01(積分幅1e-6秒、解析空間0.2秒後)  /  y+(床面) Ave 249

 前方の段差直後に10mm跳ね上がっています(1マス5mm四方)。

 後方端では75mm程度のところが境界層と見て取れます。クーラン数0.1の時で跳ね上がりが10mmで後方端が70mmでしたのでほとんど変わらない結果となりました。


1.5 まとめ

 OpenFoamのpisoFaomによる乱流境界層模擬は十分理論値と一致しているようです。

またクーラン数にもそれほど依存しないようです。この点は今後種々の計算を行う際の安心材料となります。

(時間積分幅はクーラン数満足を目安にほどほどで問題ないこととなります。)


参考文献

[1]空気力学入門 一般社団法人日本航空宇宙学会編 丸善出版

[2]OpenFOAMによる熱移動と流れの数値解析第2版 一般社団法人オープンCAE学会編 森北出版